「落書き」が5億円に?
— 2019年10月23日香港で、先日行われたオークションで、奈良美智さんの「ナイフ・ビハインド・バック」が約27億円で落札されました。奈良美智さんの作品では過去最高の落札額です。 奈良美智さんがニューヨーク・マンハッタンにあるバーに描いた落書き…
草間彌生さんの作品は数年来爆発的な人気で、美術市場での草間さんの作品の相場はうなぎのぼりです。
美術市場での草間さんの作品価格の高騰は、アジア圏での爆発的な人気が大きな要因と思われます。
しかし、草間さんの作品は、それ以前から、世界各地で個展が開かれ、非常に高い評価を得てきました。
草間さんの作品に数十年来、一環して描かれるモティーフ(螺旋、水玉、かぼちゃなど)がいくつかありますが、それらは何を意味しているのでしょうか?
・水玉
幼少期の経験が影響されているそうで、水玉を、自らの幻覚・幻聴から自分自身を守るための存在としてとらえているようです。さらに、水玉は、自身のみならず個々の生命の存在を消すためにあり、各々の水玉は、集合体になり、より大きな存在になり、果てしない宇宙に戻る(すべての生命は宇宙に帰る)という意図がこめられているように感じられます。
・無限の網
「・・・カンヴァスに向かって網点を描いていると、それが机から床までつづき、やがて自分の身体にまで描いてしまう。同じことを、繰り返し、繰り返しすることで、網が無限に拡がる。つまり、そこでは自分を忘れて網の中に囲まれてしまい、手も足も、着ているものまで、部屋中すべてが網で満たされていく。・・・」(草間彌生「無限の網 -草間彌生自伝-」から)
考えは水玉と同じだと思います。網が自己の存在を消していく。その無限に連なる網は、無条件かつ無限の愛としての理想の宇宙へつながって行く、というイメージでしょうか。
・かぼちゃ
幼少期での経験で、生命のシンボル的存在として見るようになられたようです。
生命のシンボル的存在として、草間さんは、かぼちゃに果てしない愛情を注いできたのだと思います。
かぼちゃに描かれている水玉模様は、永遠の愛を象徴するかぼちゃが果てしない宇宙につながっていく感覚です。
無条件かつ無限の愛を表している理想の宇宙への憧れを表現している、とでもいいましょうか。
シンプルなモティーフとそれらを使ったシンプルな構図の中に、深遠な理想・深い愛情がこめられているのです。
草間さんのこれらのモティーフは、ルイ・ヴィトンなどの高級ブランドともコラボした商品など多くの商品の中に描かれているので、個性的なデザインとして受け止めらているかもしれませんが、そこには深い意味がこめられているのです。
草間さんの作品に限らないことですが、美術館などである作家の絵画などを鑑賞する時、その作家や作品の予備知識の有無で、作品を見る印象や感動の度合いが大きく異なってきます。
予めその作家の本やカタログなどを眺めて理解を少しでも深めてから鑑賞すると、美術鑑賞が楽しくなってくると思います。