熊谷守一作品の魅力
— 2018年3月19日現在、熊谷守一の展覧会が、都内で開催されています。
「没後40年 熊谷守一生きるよろこび」(東京国立近代美術館)(~2018年3月21日)
熊谷守一の生涯にわたる作品を観ることができます。
熊谷守一は、生涯にわたり、様々な作風の作品を描いた作家です。
初期の暗目の色調の中に繊細な変化を描いた作品から、晩年の抽象画のような作風の作品に至るまで、常に新たな表現を追求し続けた作家でした。
そんな熊谷守一作品の中から1つ紹介させて頂きます。
座っている猫の姿ですが、
単純化された輪郭線だけで、非常に逞しい猫の筋肉質な質感が表現されています。
また、濃い目の背景色に対比された白色の猫の姿が、くっきりと浮かび上がってるような強い印象を受けます。画に陰影がないにもかかわらず、立体的な姿にも見えて、観る者に迫ってくるような力強さがあります。
しかし、これだけ単純化された色調・輪郭線の中に、リアルなイメージを失わないところに熊谷守一のすごさがあるように感じます。
さらに、猫の目の形や、前足の向き、体の向きが、対角線上に配置されているところも、感覚で描かれたのではないことがわかります。画面の幾何学的な構成も十分に考慮されているのです。
単純化されているとは言え、その中身は奥深いものがあります。
大抵の画家は、感覚だけで描いているわけではないのは勿論なのですが、熊谷守一の場合は、
・鋭い観察眼
・色に対する飽くなき探究心(色彩学を研究していた)
・また、時計を分解したり、カメラを作ってみたりと、サイエンスの分野にも大変興味をもっていた
(この辺りの資料は上記展覧会で展示されています)
ことからも、非常に計算しつくした上で、制作していたことが伺え知れます。
単純な構成に見えながらも、細かな面に非常に緻密で計算されつくされた熊谷守一の作品を是非、ご覧くださいませ。
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