画家であり版画家としてのピカソ
— 2019年7月12日去る7月6日に銀座にて、ピカソ、藤田嗣治、エコール・ド・パリ研究のトップランナーの御一人であるアート・キュレーション代表の村上哲氏をお迎えして、ピカソをテーマとして講演会を開催いたしました。
講演会では、時代とともに移り変わっていくピカソ自身の姿を通して、画家であり版画家であるピカソの芸術に触れさせていただきました。
講演会でのお話の中で印象の残ったことをいくつか述べさせて頂きます。
ピカソは、版画の技法の中でもリノカットでは1つの原版のみで多色刷りを行っているため各色刷りの原版は存在せず、基版を繰り返し使用し(変化がある)色を変えた原版として使用するため、各色原版を破壊しながら色刷りを重ねていくという版画作成方法はとても新鮮でした。
また、ギリシア神話に登場するミノタウロスという、頭は牛、首から下は人間という獣神を題材として多くの作品を残したということですが、それらの作品の中では、ピカソ自身の分身をその獣神に見立て、彼自身の複雑な心を映し出していたという話も印象的でした。ミノタウロスを通して自分の姿:本性をむき出しに淫乱で暴虐そのものであったり、ときには優しげで慈悲深く、そしてまた痛々しげに傷ついた弱い存在として描いていました。当時の恋人、特にマリー=テレーズ・ワルテルの行動をミノタウロスであるピカソの目線で描いているということにも興味がひかれることでした。
油絵の制作同様に生涯にわたって様々な技法の版画を制作し続けてきたということからも、油絵のみならず版画という芸術表現もピカソにとって非常に重要な位置を占めていたのだと感じられました。
版画、特にリノカットについては既存の版画制作方法のみにとらわれず、油絵での表現と同様に独自の表現方法を用いて一つひとつの作品を制作しているため、ピカソ芸術を表現する一手段であったことに改めて感銘を受けました。
ピカソ芸術を堪能できる作品を目の前で見ることができ、同時代のシャガールや藤田嗣治の作品とともにピカソとその時代の芸術に触れ、そこから奈良美智などの現代の芸術への流れを味わっていただければ幸いです 。
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