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村上隆とピ-ター・ドイグ

 六本木の森美術館で「世界が認める現代アートのトップランナー6名その初期作品と最新作をつないで見せる」展(2020.7.31~ 2021.1.3)で村上隆を見て、そして竹橋の東京国立近代美術館で「イギリスが誇る現代の『画家の中の画家』」ピ-ター・ドイグ(Peter Doig)展(2020.2.26 – 2020.10.11)を見てきました。

その感じをお話ししたいと思います。この二人を並べるとは「乱暴だ」という声が聞こえてきそうですが、村上隆は1962年生まれで、ドイグは1959年生まれ、ほとんど同世代なんです。 村上は「現代アートの巨人」と称され 、ドイグは「現代アートのフロントランナー」と称されています。お二人とも、国際的なマーケットでは高く評価されていて、ドイグの代表作のひとつ「のまれる」(竹橋で見ることができますよ)は、2015年のクリステーズ・オークションで日本円で約30億円で落札されました。他方、村上の「マイ・ロンサム・カウボーイ」(これは六本木で見ることができます)は、2008年のサザビース・オークションで約16億円で落札されています。

 でも当たり前ですが、受ける印象は、同じ「現代アート」でも、「根本的に」違います。ちょっと違うのではなく、「根本的に」違っています。

「現代アート」と言えばマルセル・デュシャン(Marcel Duchamp、1887- 1968)が1917年に、「ニューヨーク・アンデパンダン展」に出品した男子用小便器に「リチャード・マット (R. Mutt)」と署名をした作品(「泉」)が有名ですが、村上はまさにその延長線上にある印象を受けます。それまでのヨーロッパの「絵画」を中心とした「芸術」を真っ向から否定というか、「芸術ってなに」と問い直させています。

例えば村上の「チェリーブロッサム フジヤマ JAPAN」は、縦5メートル、横21メートル超の大作なのですが、ニコちゃんマークみたいなお花畑の真ん中で富士山が笑っています。まさに「スーパーフラット」 (Superflat) で、漫画やアニメのキャラクターを思わせる画面は、立体感がなく平面的です。

ところがドイグは、この「現代アート」の流れを十分に理解し、その中にいながら、ムンクやら、ゴッホやらの「絵画」が、どこか顔を出しています。ドイグ展のカタログには、「彼は、ゴーギャン、ゴッホ、マティス、ムンクといった近代画家の作品の構図やモチーフ」など、「多様なイメージを組み合わせて絵画を制作してきました。」とあります。まさに「誰もがどこかで見たことのあるイメージを用いながらも、見たことのない世界を見せてくれる」のです。そこにはヨーロッパの「絵画」を中心とした「芸術」が存在しています。
「ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ」という作品は、ドイツのダムの湖の古い絵はがきと、オペラの衣装係として働いていたときのドイグ自身の姿を合成した作品とのことですが、「なつかしくて、あたらしい」感じを受けました。モダンアートを参照するコンテンポラリーの手法は、かなり前からありますが、内的な思索を促す絵画がドイクなのではないでしょうか。

さて、二人を見比べて、皆様はどちらが「面白く」「長く見ていたい」でしょうか。

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