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杉本博司ってなんなんだ!

 皆さんは写真家の杉本博司(1948年生まれ)をご存じのことと思います。京都市京セラ美術館で、個展「瑠璃の浄土」(5月26日から10月4日まで)が開催されているのですが、そこでは「仏の海」に出会うことができます。薄暗い部屋の中で、たくさんの仏様がじっとこちらを見ています。真ん中でひときわ大きく座っているのが千手観音坐像(本尊)で、そのまわりを埋めているのが千手観音立像(1001躯)です。三十三間堂にいらっしゃる仏様たちなのですが、三十三間堂でお会いするのとはひと味違った仏様たちです。これは「写真」なのかしらと思えるほどの存在感です。何をどう撮影したらこうなるのかという感じがします(8×10の大判カメラを使い、平安時代の人々が目にしたような朝日の中で撮影したそうですが、技術的なことだけで、この作品が生み出されるとはとても思えません)。

そうかと思うと、万有引力で有名なアイザックニュートン(1642年ー1727年)の著作「光学」(OPTICKS。刊行は1704年。ニュートンは、実験によって白色であると思われていた太陽光はプリズムにより赤、黄、青などの屈折率の違う複数の色から構成されていることを発見したと言われています。)の原著とともに、杉本博司「アイザック・ニュートン式スペクトル観測装置」と題した装置を展示したうえで、プリズムを透過した偏向色をポラロイド撮影した色鮮やかな作品を「OPTICKS」と名付けて展示しています。仏様とニュートンを同じ空間で展示しているのです。

 これだけでも凄いのですが、ここまではまだ「写真」です。ところが、杉本は、さらに自らが監督した「映像詩」ともいうべき作品を映しています。これは「江之浦測候所」の光学ガラス舞台で、独特のダンス活動を行い世界的な評価を持つ田中泯(たなかみん1945年生)が「場踊り」を踊った記録で、人の体の動きがとても美しい。実は、この作品以外にも、杉本が監督し、「江之浦測候所」を舞台とした映像詩は、六本木の森美術館で開催されている「STARS展 現代美術のスターたち」でも「時間の庭の ひとりごと」が映されているのですが、こちらでは太陽の光と海の美しい自然を見ることができます。

 人の体と自然、その舞台となっている「江之浦測候所」ってどこなんだ、と誰でも思いますよね。これもまた、杉本が構想し10年かけて相模湾を望む小高い岬の上に創り出した建造物と庭園からなる「アートサイト」なんです。
 「写真」、「映像詩」そして建造物と庭園からなる「アートサイト」。杉本博司ってなんなんだ!とつくづく思う次第です。

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