前から観たかったロン・ミュエクRon Mueck展に行ってきました
— 2026年6月15日私は、以前、青森の十和田市現代美術館で常設展示されているロン・ミュエク作《スタンディング・ウーマン》を観たことがあり、他の作品も観たいと思っていたのですが、やっと六本木の森美術館で観ることができました。
パリ、ミラノ、ソウルを巡回した話題の個展が森美術館で2026年4月29日から9月23日まで開催されています。
やっぱりすごい!!
まず目を奪われたのが、大きな女性がベッドに横になっている「イン・ベッド」という彫刻です。
画像では分からないかもしれませんが、すごく大きくて、すごく精巧なんですよ。ロン・ミュエクは1958年オーストラリア生まれ、英国在住。革新的な素材と技法を用いて具象彫刻の可能性を押し広げてきた作家として知られているんですが、どうやって作ったのかしらと驚きます。
メーキングの動画も会場で流されていたんですが、ものすごい凝りようなんですね。
「ロン・ミュエクの最大の魅力は、人間の皮膚や毛穴、髪の毛まで極限まで精巧に再現する「超絶技巧」と、そのスケールを「ありえないほど巨大、あるいは極小」に歪めることで生み出される圧倒的な非日常感」にあると評されているんですが、まったくその通りなんです。
でもただ大きくて精巧なだけじゃなく、そこに何か不穏な「表情」があるんです。あんまり幸せそうな「顔」じゃない。何なのかしらと思ってしまいます。
手を繋いだ若い男女の「若いカップル」という彫刻もあるんですが、これも「不穏」な感じ。
一見すると若い二人のラブストーリーなんですが、後ろを見ると、彼は彼女の手を握っているのではなく、逃げられないように手首をつかんでいるんです。うーーん どういう男女関係なのかしら。
ロン・ミュエクは元々映画の特殊メイクやパペット制作を手がけていた経歴があるそうなんです。余談ですが、映画の特殊メイクや巨人といえば、『エイリアン』や『プロメテウス』というホラーSF映画が大好きな知人がいまして、ロン・ミュエクの作品の「不気味な表情」からその映画を思い起こしてしまうそうですよ。私は怖くてとても見られませんが・・・。
さて今回の展覧会の目玉は、巨大な頭骸骨が部屋中に展示されている『マス』だと思います。
一体、何なんでしょう。何を表現したいのでしょう。
私は、カンボジアで、1975年から1979年まで続いたポル・ポト政権下で刑務所として使用されていた「トゥールスレン博物館」を訪れたことがあります。カンボジア全土で無謀な社会主義改革が強行され、反革命分子とみなされた約2万人がここで拷問を加えられた後、キリング・フィールドに運ばれ処刑されました。骸骨が並ぶ慰霊塔は大虐殺の悲惨さを目の当たりにします。現在はポル・ポト派の残虐行為を後世に伝える博物館として公開されていますが、そこにあった骸骨の山を思い起こさせます。
今も、ウクライナやパレスチナでは、骸骨の山が築かれているのかもしれません・・・。
個人的には、初期の代表作である「エンジェル」(1997年)や、「ゴースト」(1998年/2014年)、「ダーク・プレイス」(2018年)あたりの作品が印象に残りました。皮膚、毛穴、髪、シミ、血管、などなど・・・人間の生々しさが本物以上で、質感はとことんリアルなのに、「イン・ベッド」のように大きさが不自然であったり、ポーズやシチュエーションにも不穏さがあります。こういった表現をしようと思ったのはどうしてかしら?どこから着想を得たのかしら?と気になって仕方ありませんでした。
ロン・ミュエクは1996年にアート界に転身したそうですが、画商の目から見て、アートの世界で突出するため、見る人にあっと言わせる圧倒的なインパクトを与えるため、あえて「気持ち悪さ」や「不穏さ」を表現として選ぶことを戦略的に考えていたのかしら・・・?なんて思ってしまいます。「綺麗」なだけだと、だたのリアルなお人形になってしまいますから。
でもそれって大事なことです。やっぱり、その作家にしかない表現やインパクトは、アートの世界で人の目にとまる上で大きな武器になりますものね。
展覧会は9月23日まで開催されていますので、この機会に見に行ってみてはいかがでしょうか?
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