バンクシーを観てたら、「世界史」に思いはせることになりました
— 2020年12月11日大阪で「バンクシー展 天才か反逆者か」を観てきました。(非公式の展覧会でしたがすばらしかったです。)
バンクシーの名前はご存じかも知れませんが、2018年10月ロンドンのオークションハウス「サザビーズ」で、バンクシーの絵「風船を持った少女」《Girl with balloon》が約1億5500万円で落札された瞬間に、額縁に仕込まれていたシュレッダーが作動し、この絵の下半分が裁断されるという事件が起きました。一体、何で、誰がやったの。損害賠償は?と誰もが思うでしょうが、シュレッダーを仕込んでいたのはバンクシー自身だそうです。オークション終了後、この絵のタイトルは「愛はごみ箱の中に」《Love is in the Bin》というタイトルに改められ、市場価値は倍以上に跳ね上がったということですから、落札者とすれば、むしろ大満足でしょう。
バンクシーは何でこんなことをしたの?という問いに、「投機対象として金だけが積まれていくオークション・ビジネスへの批判」と答えたとか。でもサザビーズは、怒るどころか、「史上初めて、オークションの最中に生で制作された作品だ」と宣伝したというのですから、これもまた強者(つわもの)です。
バンクシーって、どんな人なのかは本当に分からないそうです。この情報化社会で分からないというのも不思議ですが、メールか電話でのみしか取材を受けず、映画に出ている姿も顔が分からないように撮影されています。1973年頃生まれで、イギリス西海岸の港町、ブリストル生まれのようですから、40代のイギリス人なのでしょうか。
バンクシーが監督している映画(本当かしら?)を観たら、作品を残すのは、とっても大変です。夜中に、警察に捕まらないようにしながら、他人の家や公共の壁に、作品を制作していきます。あらかじめ用意していた型紙の上からスプレーを吹き付けて完成させる「ステンシル」という技法を用いているのですが、「捕まらないため」だそうです。
「捕まらないようにする」ために匿名なようですが、「捕まらない」どころか、兵隊に銃で撃たれそうになったこともあったようです。
2005年8月に、銃をもった兵隊達が睨む中、バンクシーは、高さ8メートルもあるコンクリート壁に、美しい南国風のビーチや、青い空を背景にバケツとスコップのようなものを持つ愛らしい少年などを9点描いています。一体どこなの、何で兵隊が銃を向けているの? 場所は、イスラエルとパレスチナの間のヨルダン川西岸地区で、兵隊はイスラエルの兵隊です。この壁は、イスラエル政府が建設したもので、イスラエル政府は「セキュリティ・フェンス」と呼んでいて、「この壁のおかげで、パレスチナ人によるイスラエル市民への自爆テロ事件は大幅に減少した」としています。でもこの壁は、もともとパレスチナ人たちが生活していた場所に、イスラエル人が入植して建設したもので、「入植地を恒久的な領土とするための既成事実化を目論んでいる」とも言われていて、国際司法裁判所は、イスラエル政府の壁の建設を国際法に反し、パレスチナ人の民族自決を損なうものとして不当な差別に該当し、違法であるという勧告的意見を出しているそうです。
何でこんなことになってるのかと言えば、「世界史」をさかのぼると、旧約聖書でおなじみのユダヤ人の国は、紀元前、ローマ帝国に滅ぼされ、ユダヤ人は世界中に散り散りになりましたが、パレスチナと呼ばれる地中海東岸の地域は、16世紀頃からは、イスラム国家であるオスマン帝国が長い間支配していたようです。その頃から、この地に居住するイスラム教徒とユダヤ教徒・キリスト教徒の三者は共存関係を維持していたようです。でも19世紀末、ヨーロッパではユダヤ人のパレスチナ帰還運動(シオニズム)が起き、ヨーロッパ諸国やアメリカ合衆国で離散生活していたユダヤ人によるパレスチナ入植がはじまりました。1914年の第一次世界大戦でオスマン帝国は崩壊し、パレスチナはイギリスの委任統治領となりました。このパレスチナで生まれたアラブ人をパレスチナ人と呼ぶようですが、入植してくるユダヤ人とパレスチナ人との対立が深まりました。第二次世界大戦後、1947年、シオニズムに押されてアメリカ合衆国などの国は国際連合でパレスチナをユダヤ人とパレスチナ人で分ける分割決議を採択し、それに伴い1948年にはイスラエルが建国されるのですが、反発したアラブ諸国とイスラエルとの間で第一次中東戦争が勃発、イスラエルが勝利しパレスチナの8割を占領するに至りました。この時期に多くのパレスチナ人が難民化してパレスチナ問題が発生したようです。
イスラエルは、アメリカ合衆国の支援を受けて繁栄していますが、パレスチナ人は軍事占領を受けて不自由な暮らしを強いられています。
バンクシーは、「この壁は国際法に違反しており、パレスチナを世界で最大の野外刑務所と変えてしまうものだ」と述べています。
うーーん。私も、バンクシーを観ていたら、長い長い「世界史」の物語に思いをはせることになりました。アートにできることって、凄いですね。
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